蜜蝋(みつろう)とは 特徴や使い方、手作りにおすすめのアイテムを紹介
「蜜蝋」は手作り品の材料として、よく見かけるアイテムです。
「蜜」の字から連想し「ハチミツと何か関係があるの?」「食べられるの?」など、シンプルな疑問を抱く人も多いのではないでしょうか。
蜜蝋とは一体何なのか、使い方や買える場所まで詳しく解説します。
蜜蝋(みつろう)って何?
蜜蝋はその名の通り、ミツバチと深い関係のある物質です。まずは蜜蝋の正体や効果、歴史について見ていきましょう。
ミツバチの巣からとれる天然ワックス
蜜蝋とは、ミツバチが巣を作るときにお腹の分泌腺から出す蝋(ワックス)のことです。働き蜂は、お腹からせっせと蝋を分泌して巣を作り、ハチミツを蓄えます。
ハチミツをとった後の巣を、お湯で煮たり加圧したりして、蝋だけを取り出し精製したものが市販されている蜜蝋の正体です。
ハチミツを採取するときに切り取るフタのような部分や、巣箱の外に作られた「むだ巣」を利用して作られます。
古い歴史を持つ
古代エジプトでは、蜜蝋をミイラの防腐剤として使っていました。
またツタンカーメンの墓や、紀元前のイタリアの遺跡では、蜜蝋製のロウソクが使われたことを示す燭台の存在が確認されています。
ロウソクといえば、宗教儀式でもよく見かけます。キリスト教の修道院では、ロウソク作りのためにミツバチを飼っていたようです。
日本には奈良時代に、仏教とともに蜜蝋のロウソクが伝わったとされています。ただし唐からの輸入品だったため大変貴重で、遣唐使の廃止とともに入手できなくなりました。
その後日本では、松脂など植物の蝋を原料としたロウソクが主流となります。
さまざまな製品に利用
蜜蝋の主成分は「ワックスエステル」と呼ばれる油脂の一種です。
ワックスエステルは人間の皮脂にも含まれる成分で、肌になじみやすく保湿力があることが知られています。
このため美容クリームやリップスティックなど、化粧品によく使われます。
塗ったものを柔らかくする効果やツヤ出し効果があり、革製品のお手入れ用品やフローリング用ワックスとしても人気です。
お菓子のコーティングに使えるほど安全性が高いことから、子ども用クレヨンや粘土の材料としても重宝されていますよ。
また最近話題の蜜蝋製品といえば「ミツロウラップ」です。防腐効果の高い蜜蝋を布にしみ込ませ、洗って繰り返し使えるようにしたエコアイテム。
おしゃれなデザインのものがたくさんあるので、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
蜜蝋の種類
ひと口に蜜蝋といっても、さまざまな種類があります。いざ買おうとしても、色や形がいろいろあって迷ってしまうかもしれません。種類別の特徴を簡単に解説します。
色による違い
蜜蝋には白いタイプと黄色いタイプがあります。
白い方は「晒蜜蝋(サラシミツロウ)」と呼ばれる、精製度の高い蜜蝋です。
花粉や異物を徹底的に除去してあり、無臭なのでお菓子作りや化粧品作りに適しています。
黄色い方は蜜蝋本来の色や香りを残し、不純物だけを取り除いたものです。
ミツバチが集めた花粉の種類や量によって、微妙に色合いが異なっています。
キャンドルやアロマワックスバーのように、直接口に入れたり肌につけたりしないアイテムを作るときにおすすめです。
形による違い
市販の蜜蝋には、主に3つの形状があります。
- ブロックタイプ
- 粒(ペレット)タイプ
- シートタイプ
ブロックタイプは溶かした巣を漉して固めただけのもので、精製度はあまり高くありません。
割安なため、自分で精製・加工してみたい人や、ロウソク作りに大量に使う人にはメリットがあるでしょう。
一般的に手作り材料として売られている蜜蝋は、ほとんどが粒タイプです。
品質がよく必要な分だけ使えるので、家庭でも手軽に扱えますよ。黄色いものから白い晒蜜蝋まで、好みに合わせて選べるのもポイント。
シートタイプは蜜蝋を薄くのばし、両面にハニカムの型押しをしたものです。くるくると巻くだけでキャンドルが作れるほか、布の大きさにカットすれば蜜蝋ラップ作りにも活躍します。
天然の着色料で色を付けた、キャンドル用のカラフルなシートもありますよ。
蜜蝋を使ってみよう
蜜蝋を使って簡単に作れるアイテムを紹介します。注意点を守って、安全にハンドメイドを楽しみましょう。
蜜蝋を扱うときの注意点
蜜蝋を使うときは、以下の点に注意しましょう。
- 直接火にかけない
- 排水口に流さない
- 汚れてもよい服装で
- 1歳未満の子どもの口に入らないように
蜜蝋は発火しやすいため、溶かすときに直接鍋に入れて火にかけると危険です。ビーカーに入れ、湯せんで溶かすようにしましょう。
また水に溶けないので、排水口に流すと途中で固まって水道が詰まってしまいます。衣服についた場合、洗濯しても落ちません。使い捨てのエプロンや、捨てても惜しくない服で作業しましょう。
1歳未満の子どもにハチミツを与えてはいけないことは、よく知られています。ハチミツを採取した巣から作る以上、蜜蝋も赤ちゃんにとっては危険といえるでしょう。
キャンドル
蜜蝋キャンドルの作り方は、いたって簡単です。
湯せんで溶かした蜜蝋を型に流し込み、中央に芯を入れるだけ。
色を付けたい人は、蜜蝋クレヨンを削って混ぜるとよいでしょう。
黄色い蜜蝋で作れば、ハチミツのような甘い香りを楽しめます。
ラベンダーやゼラニウムの精油を混ぜて、アロマキャンドルにしても◎。
アロマワックスバー
アロマワックスバーは、ワックスに精油の良い香りを閉じ込めたサシェのことです。
こちらの記事では、100円ショップの材料で作るやり方を紹介しています。
ロウソクの代わりに晒蜜蝋を使えば、よりナチュラルで高品質なワックスバーが作れますよ。
練り香水
蜜蝋を使った練り香水は、保湿しながら香りを楽しめる優れもの。乾燥が気になる季節に、指先につけるのもおすすめです。
精油とキャリアオイルを好きなように組み合わせて、オリジナルの練り香水を作ってみましょう。
詳しい作り方はこちらをご覧ください。
蜜蝋ラップ
お店でも気軽に買えるようになってきた蜜蝋ラップ。手作りなら好きなデザインで、サイズや枚数も自由に調整できます。
- 綿100%の薄い正方形の布:好きなだけ
- 蜜蝋:布の重さの3倍
- クッキングシート
- アイロン
- ダンボールや新聞紙
汚れ防止のため、ダンボールや新聞紙、クッキングシートは布の大きさよりも一回り以上大きくなるようにします。
粒状の蜜蝋をキッチンスケールで計量し、布の上に均等に並べます。
シートタイプの蜜蝋を使う場合は布の面積の半分くらいにカットしておきましょう。
クッキングシートの上から中温のアイロンをあてて、蜜蝋を溶かします。蜜蝋を布にまんべんなくしみ込ませ、平らにならしましょう。
最後にクッキングシートからはがした布を、1分ほど吊るして乾燥させます。
完成した蜜蝋ラップは手で温めると柔らかくなります。おにぎりやサンドイッチを包んだり、残り物を冷蔵保存したりするときに、ポリエチレンラップの代わりに使いましょう。
ただし熱に弱いため、電子レンジでは使えません。お湯で洗えないので生の肉や魚、油分の多い食べ物にも不向きです。酸にも弱く、レモンなどのフルーツの保存にも向いていません。
食材によって、上手に使い分けてくださいね。
自然の恵み・蜜蝋を楽しもう
蜜蝋は古くから人々の暮らしに役立ってきた、天然のワックスです。
花粉を運ぶミツバチから作られる蜜蝋は、植物から抽出する香り成分「アロマオイル」との相性も抜群。
古代の人も珍重した自然の恵みを、ぜひ生活に取り入れてみてくださいね。