鎌倉・室町が舞台のおすすめ時代小説 歴史ドラマや映画の予習にも
戦国時代や江戸時代の小説はたくさんあっても、それ以前の時代が舞台の小説は、意外に少ないと感じます。有名ヒーロー続出の戦国や、割と身近な江戸の世に比べ、室町以前の歴史って何となく地味で、授業も退屈だったな~と思う人も多いのではないでしょうか。
しかし武家政権が始まった鎌倉以降の様子を知っていれば、その後の時代を舞台にした小説を読むときに、より面白く感じるはずです。
ちょっぴり地味で敬遠されがち(?)な時代を面白く学べる、おすすめの小説を紹介します。
鎌倉時代が舞台のおすすめ小説
短いように思えるけれど、実は約150年も続いた鎌倉時代。江戸時代まで続く、武家政権の始まりです。読むと思わず鎌倉に行きたくなる小説を紹介します。
杉本苑子 竹ノ御所鞠子
源頼朝の孫で、二代将軍・源頼家の遺児「鞠子」が主人公の小説です。
祖母でもある北条政子にいいように使われてしまう悲運のお姫様ですが、こうした女性がいたかもしれないと想像を巡らせるのも、時代小説の醍醐味でしょう。
詳しくはコチラでも紹介しています。
永井路子 寂光院残照
鎌倉時代初期の様子を描いた短編集です。表題の「寂光院」は、壇ノ浦の戦いで生き残った「建礼門院徳子」などの平家女性の隠棲場所。
そこに平家滅亡を招いた張本人の後白河法皇が現れます。息子の仇ともいえる法皇に対する、徳子の心情は…?
佐藤雫 言の葉は、残りて
鎌倉幕府三代将軍・源実朝とその妻の物語です。実朝といえば、朝廷と懇意にし過ぎたかどで、鶴岡八幡宮であっさり暗殺されてしまう人物。
武力より、言葉での治世を願った実朝は、武家の側から見たら確かに優しすぎる、情けない将軍だったかもしれません。しかし時代が違えば、評価も違っていたでしょう。
権力者の純愛物語というのも珍しく、感動間違いなしです。
五木寛之 親鸞
鎌倉時代は、浄土宗や日蓮宗、禅宗など鎌倉仏教と呼ばれる新しい教えが誕生したことでも知られています。
それまでの仏教は、上流階級の学問的な側面がありましたが、鎌倉時代になると一般的な武士や庶民に広がっていきます。
そんな時代に生まれ、浄土真宗の宗祖となった親鸞とは、果たしてどんな生涯を送ったのでしょうか?小難しさを感じず、サクサク読める小説です。
室町時代が舞台のおすすめ小説
直後の戦国時代のせいで、イマイチ派手さが感じられない室町時代ですが、実は結構いろんなことが起きています。朝廷が南北に分かれたり、金ぴかのお寺が建てられたり、下克上が起こったり…
よく見るとドラマチックな室町時代がよく分かる小説をチェックしましょう。
火坂雅志 太平記鬼伝―児島高徳
南北朝時代に実在したとされている武将「児島高徳」を描いた小説です。後醍醐天皇が隠岐島から脱出するのを助け、足利尊氏と戦い続ける児島高徳。
教科書にも登場しない、え?そんな人知らないよ~みたいな人物を、生き生きと描き出す筆者の力量にも要注目です。
垣根涼介 室町無頼
2025年1月公開の、大泉洋主演映画の原作です。ただでさえ目立たない室町を舞台にした時代劇、めっちゃ珍しくて思わず手にしてしまいます。
既に権威が失墜しているけれど、税を取ることには熱心な室町幕府のありさまが、現代に通じるようで痛快です。
歴史好きでなくても名前くらいは知っている「応仁の乱」前夜が舞台ということもあり、時代小説に慣れていない人にもおすすめできます。
富樫 倫太郎 北条早雲シリーズ
戦国武将の先駆け、下克上の象徴などと伝わる「北条早雲」が主人公の小説です。室町幕府の一役人にすぎなかった伊勢新九郎(後の北条早雲)は、いかにして伊豆・相模の大名にのし上がったのでしょうか。
織田信長や豊臣秀吉、徳川家康といった戦国ヒーローに共通するのは、「戦は武力だけじゃない」と考えていたこと。財力・外交力・忍耐力など持てるものをすべて総動員してこそ、天下を取れるのです。
早雲にも戦わずしてお家騒動をおさめるなど、同じようなエピソードがあります。自分の力を信じ、さまざまな手段で信念を行動に移す力を、最初に見せつけた人物といえるでしょう。
鎌倉・室町の世界を小説で堪能しよう
本格的な武家社会が形成された鎌倉時代と、それを受け継いだ室町時代。お世継ぎ問題で揉めることの多かった江戸時代にもそん色ないほど、ドロドロした世界です。
権力に執着する支配者層と、飢えてそれどころではない庶民との差も、現代に比べて大きかったことでしょう。時代小説を通して、読者がそんなことに思いを馳せてくれたなら、作者も本望ではないでしょうか。